2011年12月13日火曜日

探す話




けっこう話題の本。『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を読みました。
非常に分かりやすくいえば、9.11テロで父親を亡くした9歳の男の子が、父親の死んだ意味を探し続ける話。
2005年にアメリカで出版されて超ベストセラーだったのに、なぜか邦訳がそれから10年もたって
、今年出ました。
9.11から10年目、ということなんだろうか。映画化されるからだろうか。(スティーブン・ダンドリー監督で、トム・ハンクスとサンドラ・ブロック主演。ハズしようながない。アカデミー作品賞の、かなり本命候補らしい。)

感想。
思わぬところからヤラれた、という感じ。

表現方法が独特で、それは文体でもあるし、視覚的な見せ方も。
語り手が3人いて、それぞれの語り口調も時間的背景も全然違うし、場面によって文字の字体も大きさも行間も違うし、写真が入っていたり、1ページに1行しかなかったり、と思うとどんどん文字が重なっていって最後はページ全部が真っ黒になったり、というかんじで、けっこう読みにくい。

しかも、男の子が、死んだお父さんの遺品にあった謎の鍵がいったい何の鍵かを探して、ニューヨーク中の「ブラック」という名字の人に会い続けるうちに、いろんな人の絡まった思いが落ち着くところに落ち着いて行く、という筋。

9.11後の話で落ちるところが分かっていて読みにくい、って、かなり、ヤラれてたまるか、って要素が満載で、けっこう距離感ありながら読んでいたはずなんですが。
きっちりヤラれてしまった。
久々、本読んでて泣けました。
しかも、落とし所で、というのでなく、最終的にぜんぶが固まりみたいになって。
そういう意味では、あの独特の表現方法というのはすごく効果的だと思った。
息苦しい感じとか、こんがらかっていく感じとかが、視覚からまず脳に訴える。

深く思ったのは、探しても、みつからない。ということです。
なくなったものはもうどうやっても戻らないし、きっとこれから先もなくなり続ける。なくならないものなんて、ない。
それに気づいて向き合って、はじめて、なくしたということを受けいれることができる。
なくしたものといっしょに生きていくことができる。
そうなるには、探し続ける、っていう廻り道が、やっぱり必要なのかもしれない。

この本が、アメリカであれだけのベストセラーになったのは、それだけ失った理由を探し続けてる人が多かったからかもしれない。
なんにしても、すごく現代のアメリカの小説、っていう空気感で、そして、よくできてます。
集中して読んでしまうほうが、いいかもね。


でもやっぱり私は、人が死んだり事件が起きなくても、生きるとか死ぬとかの意味をきっちり描けるような小説や映画が、すきです。
人が死んで、、死ぬ意味を描くなんて、ある意味安易だ。
なので、次は真逆の路線で、ムーミンを読むぞ。




わくわくするなあ。ムーミン。
こっちのほうが、得るもの多かったりして。

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